令和6年1月1日からメール等の電子取引で授受した請求書等データ(電子データ)の電子保存が義務となった。電子取引で受け取った取引情報のうち、同一内容を書面でも受け取った場合、それぞれの保存をどうすべきか判断に迷いがちだが、電子データと書面の取引情報、どちらを正本とするかにより対応は異なる。
保存義務の対象となる取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書や契約書、送り状、領収書、見積書その他これに準ずる書類に通常記載される事項をいう(電帳法2五)。電子データでやり取りしたものが対象で、書面でやり取りしたものをデータ化する必要はないが、取引先によっては、電子データの授受の不具合を懸念し、書面で同一内容を送付してくるケースもあろう。
取引先から電子データと書面の両方を受け取った場合には、その取引情報に着目し、内容に差異があるかどうかがポイントとなる。例えば、証憑書類のうち、請求書については、通常、取引終了後の確定情報に基づいて作成されることから、電子データと書面の両方を受け取ったとしてもその内容に差異はないと考えられる。この場合、書面を正本として取り扱うことを取引先との間で決めていれば、実務上は、書面の正本の保存のみで足りる。
ただし、取引先から電子データと書面の両方を受け取り、書面を正本とする場合であっても、補足や変更が生じて取引情報が書面と同一にならない場合は、保存対応において留意が必要だ。例えば、注文書について電子データと書面の両方を受け取り、後日、注文内容の補足をメールのみで受領した場合、そのメールに書面(正本)を補完する取引情報が含まれていれば、書面とメールを含む電子データの両方の保存が必要となる。
一方、受領したメールの内容が書面(正本)の注文内容に大きく影響するものでなければ、メールの保存は不要となる。
税務通信令和6年4月8日号より
コラム一覧はこちらへ
|